rekordbox の ROLL エフェクト

rekordbox に搭載されている ROLL というエフェクトがおもしろいので、いろいろと試した結果を記載します。

基本

まず、rekordbox で利用できる ROLL エフェクトには 2 種類あります。

  • PAD FX の ROLL
  • BEAT FX の ROLL

どちらも、ON にしたタイミングで入力を録音し、指定した拍の倍率の長さでループしたものを再生します。PAD FX の場合は押している間は完全にチャンネルを乗っ取る(本来の音は出ない)一方で、BEAT FX の場合は Level でプレイヤーの音との割合をクロスフェードできるようになっています。 真ん中で ROLL 側が 100%, 左に振り切ってプレイヤー 100% です。右に回しても何も起きない気がします。基本的な挙動は、たとえば下の動画の 3:00-3:40 で確認できます(ただし、3:40 の後にやってるチャンネル間の移動は少なくとも DDJ-FLX4 + rekordbox ではできません)。

おもしろいことに、ROLL からの再生はプレイヤーからの出力とは別で、ROLL が出ている間に曲の再生を止めても音が流れ続けます。そのため、たとえば 4 Beat とかで BEAT FX の ROLL を 100% 入れて別の曲をロードし、タイミングよく再生した状態で FX LEVEL でクロスフェードしてあげると、1 デッキだけで DJ ができたりします。

ルーティング

Player → Trim → EQ → ROLL (PAD FX) → ROLL (BEAT FX) → その他 FX いろいろ → Ch. CUE → Ch. Fader → その他いろいろという順番のようです。 PAD FX の ROLL の出力に BEAT FX の ROLL をかけることはできますが逆はできません。また、どちらの ROLL の出力に対しても CFX や ROLL 以外の BEAT FX, PAD FX がかかります(全部はためしていませんが)。一方で ROLL の出力に対しては EQ や Trim はかかりません。ROLL を 100% で流しているときに Smart CFX を使うと、プレイヤー側の処理だけが隠れてミキサー側の処理だけが入るのでおもしろいです。

ROLL が有効な状態で BEAT FX のチャンネルを切り替えると、単に各チャンネルの ROLL が ON/OFF される挙動になります1。また、rekordbox において、BEAT FX はチャンネルごと/マスターにそれぞれ用意されてはいますが、DDJ-FLX4 の操作ではチャンネルごとのものしか有効になりません。1 & 2 で ROLL を有効にした場合、マスターにかかるわけではなく両チャンネルで ROLL がオンになります(普通にチャンネルフェーダーで片方だけ切ったりできる)。FX パネルをみると、rekordbox 側で押せばマスターにもかけられそうな雰囲気を感じますが、なんか FLX4 を接続している状態では有効にできませんでした(FLX4 を外すとできる)。同様に、rekordbox としては BEAT FX の ROLL の上に別の BEAT FX を乗せることもできるわけですが、FLX4 を接続している状態では 1 チャンネルに同時に 1 つしか BEAT FX が有効にならないため、これはできません。

PAD FX については、見た目はプレイヤー側にありそうですが、ROLL に限らず EQ の後に入っている感じがするので、実際にはミキサー側にあるのかもしれません。その割にはトラックをロードし直すと PAD FX の ROLL が止まってしまうため、なんやねんと思います(リバーブとかは残るのに!)。

録音と再生の挙動

ROLL は指定した拍の倍率の周期でサンプルをループします。途中で倍率を変えると、そのままループの周期が変更されます2。ここで興味深いのが、ON にしたタイミングより長い周期に伸ばすこともできる点です。1/2 で ON にしたあと 1, 2, 4, 8 と伸ばしていくことができます。どうやら、拍の倍率にかかわらず常に 8 Beat ぶん録音しておいて、それをつかっているみたいです。1/2 で始めたあとに ROLL がなっている途中に EQ をいじって、そのあと 8 まで伸ばすと、EQ をいじった後の音が鳴ります。

BEAT FX は矢印のボタンで拍の倍率を変えることができますが、PAD FX では ROLL のパッドを押した状態で別の倍率の ROLL のボタンを押すと、同じサンプルを維持したまま拍の倍率だけを変える挙動になります。上で説明した BEAT FX の挙動と同じく、これで倍率を伸ばすこともできます。BEAT FX は最大の倍率が 8 ですが、PAD FX は 32 まで伸ばすことができ、たぶん押してから 32 Beat の間はずっと録音してるんだと思います。大変そう。

BEAT FX の ROLL において、録音したサンプルの再生は BEAT FX の BPM にあわせたタイミングで起きます。PAD FX の場合はおそらく対応するチャンネルの BPM です。ここで、ROLL の再生中に録音時と違う BPM に変更したとしても、再生のタイミングが変わるだけで特にサンプルのストレッチは起きない点に注意が必要です。つまり、長い倍率で ROLL しているときに BPM を変えると普通に変な感じになるのでやめたほうがいいでしょう。一方で 1 以下でテンポを速くするぶんにはやれそう。

文献

音を出しているのは rekordbox ですので BEAT FX や PAD FX のそれぞれのエフェクトの詳細について rekordbox のマニュアルに書いてあってほしいんですが、特に書いてありません。

https://rekordbox.com/ja/download/#manual

基本的に rekordbox のエフェクトは DJM シリーズのものをコピーしているようで、説明はそちらをみるとわかることがあります。たとえば、SLIP ROLL と ROLL の違いは BEAT の変更時に録音をやりなおすか否か、ということが書いてあったりします。

https://docs.pioneerdj.com/manuals/DJM_900NXS2_DRJ1039A_manual/


  1. ちなみに、上の動画にもありますが(rekordbox ではなく)DJM シリーズだとそのまま ROLL の再生が別チャンネルに移動する挙動になるそうです↩︎

  2. (SLIP ROLL の場合はさらにこのタイミングで再録音される)↩︎